「挑戦」のうちの二つ目は、「叶水夏の学校」を再開したことです。夏の学校は、学外の参加者を迎え学びと対話をともにする、独立学園主催の宿泊プログラムです。今回テーマを「幸いなるかな、平和を実現するものたち〜「一人」から始まる〜」として実施しました。外部講師として、哲学者カントの研究者である山本精一先生(本校前校長)をお迎えしました。子供から大人まで、幅広い年齢層の方々が集まり、内部スタッフも含め総勢125人程度のメンバーで、2泊3日の時間を過ごしました。

 振り返りのアンケートの中で、参加者の方々から真摯な感想を多数いただきました。どのような会だったか雰囲気をお伝えすべく、そのうちの一部を共有します。

「1日目の星空の美しさは決して忘れることはないと思います。もうそれだけで、ここで過ごす意味があるように感じました。(…)語り合いやお食事、コーラス等を通して、今この時代だからこその貴重な体験が詰まっているように思いました。実際に、この地に来て、学園の空気を自分の感覚を通して感じられたことは、とても良い機会となりました」

「ここだと武器や鎧や仮面を手放して、自分を開き、本音を語れる。他人の目線や価値観よりも、自分になり、自分でいられる。何故そんな風になれるのか、今の私にはわからない」

「礼拝、語り合い、すべての機会で学びが多く、とても書ききれません。幸せです。とはいえ、大きく一つ取り上げるなら、1日目の講演でした。傷ついた葦を折らぬよう、ともしびを消さぬよう。これは、どんなに絶望に見える状況でも、ふんばり続ける人々がいるのだという気づきを与え、そうした人々によって、最悪に見える状況でも、この程度にしてくれているのだという気づきをも与えてくれます。その気づきは、また、自分にできることを小さくとも重ねていこうという意欲につながっていきます。このことを骨子としながら、1日目夕拝の「ありのままの自分を受け入れることの大事さ」、二日目講演の「問い続けながら、問いを立てながら生きることの大事さ」、二日目夕拝の「人に流されず、しかし他者との出会いを通して、自分を新しくしていく大事さ」など、良きことば、実感のあることばにたくさんふれることができ、自分の中でどう血肉にしていくか、嬉しい悩みがたくさんです」

「自分を見つめ直す大きな学びと静まることの大切さに改めて気づかされました。忙しさや日常をこなすことを言い訳にしたり、知らず知らず周りや環境のせいにしていたり、「〜せねば」にとらわれていたり、言葉の上ずみだけを受け取って深いところの声が聴けていなかったり(聴こうとしていなかったり)、反省はたくさんありますが、この機会に感謝して、これらを前向きに方向転換していきたいと思いました」

「(夕拝で独立学園生が語った)感話で「ウクライナやパレスチナのことをきちんと知りたい」と言っていて、何か目を背けたくなる現実を見たくない、見ようとしていない自分を反省した。辛すぎて見られない、怒りが込み上げる、そんなことが嫌だった。受け止められない、日々自分で精一杯である言い訳をしてきたことに気がついた。(…)自分が愛されてきたこと、恵まれていること、その自分がすべきことは…と。色々なことがいっぱいで、まだ消化できず、言葉にもできない」

「世の中の勢いに潰されそうになるけど、ここで得られたチカラで「つぶされてなるものか!!」って思えるようになったような気がします。祈りに支えられた夏の学校でした。ありがとうございました」

「初めての学園訪問で最初のおどろきは、皆さん、若い方の瞳の真っ直ぐさ、きれいさ、でした。大人の顔色をのぞき込む様な仕草のない、とても気持ちの良い、瞳。(…)おかげ様で、様々な、気付きの種子を頂きました。日常に戻り、“おかれた場”で芽を出し、花を咲かせたらと思いました」

 「どんどん不気味で、息苦しい世の中になっていく中で、不安を感じる日々でしたが、夏の学校に参加し、皆で心を開いて語り合う中で、希望が与えられました。(テーマである)「一人から始まる」という言葉に重みを感じます。神様に祈りつつ、自分にできることを、身近なところから行い、平和を作り出す者となりたいです」

ご紹介した以外にも、心のこもったご感想の数々を頂戴しました。一つ一つを読みながら、強く感じたことがあります。それは、独立学園は「山の上にある町」でありたいということです。「山の上にある町は隠れることができない」とはイエス・キリストの言葉ですが、「隠れることのできない」「山の上にある町」とはどんな場所か。それは、人生という旅を続けている方々が、夕闇のなか灯火のともる町を見つけ、「あそこでなら少しやすめるかもしれない」と思えるような場所。あるいは立ち寄った人が、「ここに集う人と話すと、旅を続けるエネルギーをもらえる」と感じられるような場所。私の願いは、独立学園がそんな「山の上にある町」であることです。

 叶水夏の学校の今後の開催はまだ決まっていませんが、もし開かれることになりましたら、ホームページやSNSでご報告します。

中村頌(教員)記