基督教独立学園高等学校は、山形県の南端、豪雪地として名高い小国町にある全寮制、普通科の高等学校です。生徒は3学年合わせても約70名という小さな学校です。

建学の理念

「神によって作られた人格」の尊重を自覚せしめ、天賦(てんぷ)の個性を発展させ、
神を畏れるキリスト教的独立人を養成する。

内村鑑三の

読むべきものは聖書である
学ぶべきものは天然である
すべき事は労働である

の言葉のごとく、聖書と自然と労働をとおしての人間教育と、
真理としてのキリスト教伝道を目指す。

基本方針

  • 1 「少人数教育」を守る
    1学年25名定員を堅持する。
  • 2 生徒の「自治の力」を信頼する
    学園の運営を、職員と生徒が協力して行う。 学校行事や寮生活の運営責任を、可能な限り、生徒の手に委ねる。
  • 3 あえて「不便な環境」を保持する
    利便性優先の風潮を排し、できるだけ簡素な生活をする。 TVや携帯電話(スマートフォン)のない共同生活環境を守る。

信仰の立場

既成のどのキリスト教派にも所属していません。初代校長は、内村鑑三が唱導した自由と独立を尊ぶ無教会の立場に立ち、本校を創設しました。本校は、聖書の示す真理の道を求めて歩んでいます。

教育方針

本校は創立以来、変わらない独自の教育方針を貫いてきました。創立者•鈴木弼美(すずき すけよし)は、第二次世界大戦中、世の流れに抗して非戦平和主義を貫き、友人•渡部弥一郎(わたなべ やいちろう)氏と共に8ケ月間、獄中生活を送りました。敗戦後、新制高校として再出発してからは、受験準備教育に抗して「本来の高校教育が目指すべきもの」を求め、学問(真理探求)の基本を学び、自己と人生、社会と国家の在り方について、自ら深く考える人間の育成に励んできました。こうした歴史によって培われてきた本校の教育目標と教育方針は、以下の諸点です。

1.「神を畏れる人間」を育てる

「神を畏るるは学問の始め」(旧約聖書 蔵言 1:7)を教育の土台に据える本校にとって、朝拝・タ拝と日曜礼拝は、学園生活の最も大切な要である。聖書の言葉にじかに触れ、考え、祈り、「真理」を探求する。入学時に校長と交わす「契約の書」に立って、どこまで「嘘のない生活」ができるか格闘する。そのなかで「神を畏れて、人を恐れない」(内村鑑三)、真に自由で、真に独立した人を育てたい。

2.「天然から学ぶ人間」を育てる

飯豊連峰の山懐に抱かれた叶水の天然自然が、生徒の学びと生活の場である。足元の草花から天空の星々の世界まで、身のまわりの大自然に直に触れ、よく見、よく感じ、よく考える。そうした日々の積み重ねのなかで、「天然からのメッセージ」へと心を開き、大地、天空、一木一草の語りかけに耳を澄まし、創造主へと目を上げ、地球的視野のもとで、いのちを大切にするシンプルな生き方を着実に身につけていってほしい。

3.「労働する人間」を育てる

自然の中で汗を流して労働することの労苦と喜びと充実を経験することは人間の土台をつくる。牛・豚・鶏の世話、米や野菜作り、製パン、炊事、除雪等を通して、共同体の生活を支えあう労働作業を、全員で朝にタに協力•分担することを丁寧に積み重ねていってほしい。

4.「自ら学ぶ人間」を育てる

学びへの意欲は、一人一人のなかに深く宿っている。そもそも人間は「生きる」ために「学ぶ」ことを必要としている。先人の知恵と経験の土台を踏まえつつ、対話すること吟味することを通して、一人ひとりが新たな知恵と経験に啓かれていく事を目指す。そのことを通じて生涯探求し続けていく上での土台作りを目指す。

5.「平和を創り出す人間」を育てる

全寮制の下、生徒全員と教職員の多くが同じキャンパスで生活を共にするなかで、異質なものを排除せず、互いの人格を尊重して共に生きることを大切にしたい。「憲法勉強会」「思想・良心・信教の自由を守る日」、沖縄・韓国への「平和の旅」等を通して、戦争の事実を深く知り、世界の平和を創り出す人を育てたい。こうした経験や学びを通して「非戦平和」への不屈の意志をもった人間を、この国と世界に送り出したい。

独立学園の三本柱

内村鑑三の思想を基に、学園の三本柱は建てられています。
以下は、私たちが大切にし、学び続けている、内村の文章です。
(一部、現代の表現に改めました)

「読むべきもの、学ぶべきもの、為すべきこと。」

『聖書之研究』95号「所感」 1908(明治41)年1月10日

読むべきは聖書

読むべきものは聖書である。小説ではない。政論ではない。しかり、神学ではない。 註解ちゅうかいでない、聖書そのものである、神のことばにして我が霊魂の声なる聖書である、 聖書は最も興味深き最も解し易き書である、世々のいわより流れ出づる玉の如き清水である。 これを哲学的に解釈せんとせず、これを教会の書として読まず、 神が直接に霊魂に告げたまことばとして読んで、 聖書はその最も明瞭なる意味を我等に供給する。我等はすべての物を読むをやめても、 しかり、時々すべての物を読むをやめて、一意専心聖書を読んで、 これをして我等の霊魂を活きかえらしむべきである。

学ぶべきは天然

学ぶべきものは天然である。人のみし法律ではない。その作りし制度ではない。 社会の習慣ではない。教会の教条ドグマではない。ありのままの天然である。 山である、河である、樹である、草である、虫である、魚である、とりである、 けものである。これ皆直接に神より出で来りしものである。天然はただ天然ではない。 神の意思である。その意匠いしょうである。その中に最も深い真理は含まれてある。 天然を知らずして何事をも知ることは出来ない。天然は智識の「いろは」である。道徳の原理である。 政治の基礎である。天然を学ぶは道楽ではない、義務である。 天然教育の欠乏は教育上最大の欠乏である。

為すべきは労働

すべき事は労働である。口をもってする伝道ではない。筆をもってする著述ではない。 策略をもってする政治ではない。手と足とをもってする労働である。労働によらずして信仰は保てない。 労働によらずして智識以上の智識なる常識は得られない。労働は労働としてのみ尊いのではない。 信仰獲得ならびに維持のみちとして、常識養成の方法として、 愛心喚起の手段としてまた最も尊いのである。 キリストにおける信仰は文に頼りて維持することは出来ない。 語るを知りて働くを知らざる者は大抵は遠からずしてキリストをてる者である。 福音は神学ではない労働である。聖書の最もき註解は神学校より来る者にあらずして、 田圃たんぼより、または工場より、または台所より来る者である。 労働なくして身は飢え、智識は衰え、霊魂は腐る。労働をいやしむ者は生命をてる者である。 労働これ生命と言うも決して過言ではない。
三本柱全体像
『三本柱』 ©Asami Takeuchi (本校卒業生)

契約の書

建学の理念に示しているように、本校では、神を畏れる一人の独立人として、よく考え、 自分で判断し、責任を持って生活できる人になることを大切に考えています。 ですから、生徒の自主性を尊重し、細かな規則はできるだけ作らないようにしていますが、 年齢や考え方の違う人たちが一緒に生活をしていくためには、 生活上の基本的なルールの他に、当然守らなければならない約束があります。
本校では、入学にあたって、次のような契約(約束)を交わしています。これは本校の憲法と言えます。
以下が、契約の書の本文です。

この学校は、創立者の「真理としてのキリスト教を伝えたい」という念願から始まっています。 信仰を強制したり、信仰のあるなしを問題にしませんが、 一人ひとりが、神を畏れ、聖書およびキリスト教について、 熱心にまなび、真理を尊び、真実を求めて、うそのない生活をすることを願っています。

本校では、生活して行くにあたって、次のことを非常に重要に考えています。 もし破った場合、ここでの共同の生活ができなくなります。 自分の行動には、責任を取らなければいけないということをしっかりと受けとめ、 次の四つの約束ごとを固く守る決心をして下さい。

(1)酒を飲んだり、たばこを吸ったりしないことを約束できますか。
(答)
(2)人格的ふれあいを大切にし、他の人に対して、精神的・肉体的苦痛を与えること(いじめやいやがらせなど)をしない。このことを約束できますか。
(答)
(3)暴力をもって、物事の解決手段としない。このことを約束できますか。
(答)
(4)この学校では、互いの人格を大切にした広やかな関係を築くことを目指しています。特定の人との交際関係、性的関係を持たないことを約束できますか。
(答)


この学校では、上の四つの規則以外に次のことも大切に考えています。 次のことを守る努力をして下さい。

(1)あなたは、品性を高めるために、低級な娯楽、けばけばしい服装および 流行を追うようなことから離れ、ノーブル(高尚)なものを求め、 簡素な生活をすることを努力しますか。
(答)
(2)あなたは、学生の本分である勉強に真剣に取り組むことを約束しますか。
(答)
(3)あなたは、学校や寮の規則および日常生活における約束ごとを守り、 友人の心を大切にしてより良い共同生活を築き上げるよう努力することを約束しますか。
(答)
(4)あなたは、自分の行動について、他人も行っているからといって、 自分の責任を免れることはできないということを承認できますか。
(答)

私は、以上お答えしたことについて誠実に守ることを約束いたします。

     年  月  日

本人署名

保護者確認署名

基督教独立学園高等学校長署名

歴史

創立者鈴木弼美(すけよし)(1899-1990)は山梨県に生まれ、 東京帝国大学物理学科を1926年に卒業しました。大学在学中の1924年に内村鑑三の門下に入り、 キリスト教を学び、物理学の真理よりも信仰の真理の方がすぐれているとの確信を得て、 聖書の研究を一生の仕事と考えるようになりました。

1924年、内村鑑三は集会の青年に、「僕は以前(アメリカにいた頃)から 行きたいと思っていたところがある。それは山形県の山奥の小国村というところで、 ここならアメリカの宣教師も入った事はないだろうからここにしようと思ったが、 とうとう今日まで行けなかった。もう一つ、それは岩手県の山地である。 この夏休みに諸君のうちこれらの地方に行って伝道してくれる人はいないか」と呼びかけました。 内村鑑三は、山形県小国地方は山に囲まれた別天地であり、上杉鷹山の領地でもあったので、 ここに純粋のキリスト教を伝えたいと考えていました。 この呼びかけに応え、鈴木、政池仁、横山善之らが毎年のように小国に夏の訪問伝道に 出かけるようになりました。

鈴木は1933年12月に小国に居を移し、翌年9月1日に基督教独立学校を創設しました。 午前は塾生と木工などの仕事をし、午後は勉強を教えました。 鈴木は1937年より日中戦争などのため6年間応召しましたが、1944年、 平和主義のため治安維持法違反被疑で山形警察署監房に8ヶ月間拘置されました。 この間、基督教独立学校は休校状態となりました。

1948年、学校制度が改編された際、新制の基督教独立学園高等学校として再発足しました。 あまりにも小規模という理由で当初文部省は認可をしませんでしたが、 当時の山形県知事・村山道雄氏の尽力で翌年に認可されました。 文部省(当時)の危惧にもかかわらず、小規模であることを堅持し、 受験準備へと流れがちな時代の趨勢(すうせい)に抗して、 聖書を土台とした全人的な人間教育を追求しつづけて現在に至っています。

キリスト教独立学園 簡易年表

  • 1924年7月
    内村鑑三の呼びかけによる小国伝道はじまる
  • 1934年9月1日
    鈴木弼美 基督教独立学校設立
  • 1944年6月12日
    鈴木弼美 渡部弥一郎と共に戦争を拒否し、天皇を神としないため、治安維持法に違反するとして逮捕される(翌年2月まで拘置)
  • 1948年4月26日
    基督教独立学園高等学校設立(校長・鈴木弼美、理事長・政池仁)
  • 1957年3月31日
    鈴木弼美理事長兼任
  • 1982年11月9日
    白崎吉郎理事長就任
  • 1988年4月9日
    武祐一郎校長就任
  • 1995年4月9日
    助川暢校長就任
  • 2000年7月27日
    小関充理事長就任
  • 2005年4月9日
    鈴木孝二校長就任
  • 2006年10月1日
    武祐一郎理事長就任
  • 2008年4月1日
    安積力也校長就任
  • 2011年11月19日
    大高全洋理事長就任
  • 2015年4月1日
    山本精一校長就任
  • 2017年7月11日
    大西洋司理事長就任
  • 2019年4月1日
    後藤正寛校長就任

姉妹校

プルム農業高等技術学校(1976年11月17日締結)

1958年に創設され、競争より共生、何よりも自己決定を尊重し「ともに生きる平民」を育てることを教育理念とする。
聖書の教えを土台とし、地域農村との豊かなつながりの中で学校教育を実践しており、農業を通じて環境教育や持続可能な生態系づくりの実践の場ともなっている。
HPはこちら:http://www.poolmoo.net/

キリスト教愛真高等学校(1988年4月15日締結)

キリスト教独立伝道者高橋三郎を創立責任者とし1988年に創設。
真に自立した人間として真実に生きようとする人を世に送り出したいと願って設立された学校。真理探究の精神をもち、労働を大切にし、広い視野に立って平和を愛する国際的精神を備えた人間形成を目指し、豊かな自然環境の中で、聖書に基づく全人教育を行っている。
HPはこちら:https://aishinhigh.ed.jp/

愛農学園農業高等学校(2018年10月25日締結)    

愛農会の創立者小谷純一により1964年に創設。聖書の精神に基づいて「神・人・土を愛する」人格形成を目指している。
日本で数少ない私立の農業高校として、キリスト教主義に立ち、有機農業を学ぶことの出来る全寮制高校としての歩みを進めている。
*愛農会:土と命を守る担い手の育成や有機農業の普及・教育、有機食品の検査認証などを行っている公益社団法人。
HPはこちら:https://ainogakuen.ed.jp/