老舗の食堂には秘伝のタレというものがある。当然この成分などは企業秘密なのだが、毎年毎年つぎ足しながら何十年もこのタレを使っていて、譬え、その成分がわかったとしても、同じ味を出すことはできないし、そのタレを作っているお店でさえ、そのことは不可能である。これは長年の熟成と、そして、年々に加えるタレの新しい味が出す絶妙のハーモニーが作り出すものだ。

 学園で生活していて、感じるのは、一人一人が醸し出す優しさだ。特に、「寄り添う」というあり方での優しさだ。一言で「寄り添う」といってもいろいろな在り方がある。じっと話を聴く人、一緒に涙する人、・・・・。「寄り添う」ということほど難しいことはないと思う。「寄り添う」とは何かということを定義することは不可能だ。そして、相手の人の心と同じ心になることも不可能だ。しかし、二人の間では心の共鳴が起こっているのを感じることができる。

  人は自分が経験したことでないと、自然の形で他者に行うことができない。

 私は思う。「寄り添う」ことができる人は、過去に家庭でまたは中学校で、そして学園で「寄り添われた」経験が、そしてそのことが自分が前を向くきっかけになったことがあるということを。そして、そのことがこれからも学園で、そして卒業後の世界の中で引き継がれることを。そしてそこには、大切な人、かけがえのない人の存在があるということを。

※独立学園には、文通部という委員会があります。年に4回、学園の様子が書かれた新聞を発行し、姉妹    校や保護者に送っています。
新聞に今年から「独声人語」というコーナーができました。
今回は、その中で職員が書いたコラムをです。