基督教独立学園の教育方針
校長 後藤 正寛

本校は創立以来、変わらない独自の教育方針を貫いてきました。 創立者・鈴木弼美(すずき すけよし)は、第二次世界大戦中、世の流れに抗して非戦平和主義を貫き、 友人・渡部弥一郎(わたなべ やいちろう)氏と共に8ヶ月間、獄中生活を耐えぬきました。 敗戦後、新制高校として再出発してからは、受験準備教育に抗して 「本来の高校教育が目指すべきもの」を求め、学問(真理探求)の基本を学び、 自己と人生、社会と国家の在り方について、自ら深く考える人間の育成に励んできました。 こうした歴史によって培われてきた本校の教育目標と教育方針は、以下の諸点です。

1.「神を畏れる人間」を育てる

「神を畏るるは学問の始め」(旧約聖書 箴言1:7)を教育の基軸に据える本校にとって、 朝拝・夕拝と日曜礼拝は、学園生活の最も大切な要である。 聖書の言葉にじかに触れ、考え、祈り、「真理」を探求する。 入学時に校長と交わす「契約の書」に立って、どこまで「嘘のない生活」ができるか格闘する。 そのなかで「神を畏れて、人を恐れない」(内村鑑三)、真に自由で、真に独立した人を育てたい。

講堂壁面のヘブライ語
講堂壁面に刻まれたヘブライ語 箴言1章7節
(創立者により一部改)
[ ツアダ ツーシーレ ーェウァヤ ツアルイ ]
←(右から左に読む)

2.「天然から学ぶ人間」を育てる

飯豊連峰の山懐に抱かれた叶水の天然自然が、学園生の学びと生活の場である。 足元の草花から天空の星々の世界まで、身のまわりの大自然にじかに触れ、よく見、よく感じ、よく考える。 そうした日々の積み重ねのなかで、「天然からのメッセージ」へと心を開き、 大地、天空、一木一草の語りかけに耳を澄まし、創造主へと目を上げ、地球的視野のもとで、 いのちを大切にするシンプルな生き方を着実に身につけていってほしい。

学園裏山からの冬の展望
学園裏山からの冬の展望

3.「労働する人間」を育てる

自然の中で汗を流して労働することの労苦と喜びと充実を経験することは、人間の土台をつくる。 牛・豚・鶏の世話、米や野菜作り、製パン、炊事、除雪等を通して、 共同体の生活を支えあう労働作業を、全員で朝に夕に協力・分担することを 丁寧に積み重ねていってほしい。

創立者 鈴木弼美による書
創立者 鈴木弼美による書

4.「自ら学ぶ人間」を育てる

学びへの意欲は、一人一人のなかに深く宿っている。 そもそも人間は「生きる」ために「学ぶ」ことを必要としている。 そして「学ぶ」ためには、常に先人の経験を土台として、そこから積み上げていく必要がある。 そのなかでそれまで自分が「当たり前」だと思っていたことが引っくり返されるとき、 人は自ら学び始める。そのような学びの姿勢を豊かに身につけてほしい。

5.「平和を創り出す人間」を育てる

全寮制の下、生徒全員と教職員の多くが同じキャンパスで生活を共にするなかで、 異質なものを排除せず、互いの人格を尊重して共に生きることを大切にしたい。 「憲法勉強会」「思想・良心・信教の自由を守る日」、沖縄・韓国への「平和の旅」等を通して、 戦争の事実を深く知り、世界の平和を創り出す人を育てたい。 こうした経験や学びを通して「非戦平和」への不屈の意志をもったノーブルな人間を、 この国と世界に送り出したい。